「おかえり」に何と返すか
「おはよう」といったら「おはよう」という。
「さようなら」といったら「さようなら」という。
こだまでしょうか?
いいや、挨拶だ。
ここら辺の挨拶はいい。言われたことを言われたままで返せば済む。
しかし、「おかえり」に対してはどうだろう。
ここで「おかえり」と返せるのは、
家に帰ったら家族が殺されていて、タイムリープの力を使って事故を未然に防ぎ、帰った時に何も知らない家族が「おかえり」と言ったのに対して涙ながらに「おかえり」と言うタイムトラベラーか、インコである。
一般の「おかえり」には当然「ただいま」と返すのが妥当なのだが、
この間、近所のおばちゃんから
「おかえり」
と言われた。
さて、どうしたものか。
ここで「ただいま」と返すのは何かおかしい。距離感が近い。
敬語にして、「ただいまです!」と返すのはどうか。
いや、壇太一みたいで嫌だ。
敬語の仕方が悪かった。「ただいま戻りました。」だ。
僕は忍者か?この人に使えているのか?
却下。
困った。残り時間は1秒もない。
無視すれば、あそこの家の子はどんな子だと後ろ指を指され、家族にも危害が及ぶ。
僕はタイムトラベルできないからそれは避けたい。
考えろ、出題者の意図を読むのだ。
このおばさんとはかなり久しぶりに出会った。
だから、おばさん側にしても、あ、あの子が元気に走ってるぐらいの気分で声をかけたのだろう。
つまり、かける言葉は「こんばんは」でも何でもよかったのだ。
ただ、「おかえり」を選んだだけで、その意図は僕の生存確認である。
ここまでを刹那に思考したか定かではないが、僕は確かにこう答えた。
「はい、元気です!!」
よかった、これで家族は無事だ。