徒然なるさざれ石

シャボン玉おじさんを目指す大学生奮闘記

おニューのコートはカエルと共に

昨日買ったコートをとりあえず着たかったので、大学にもバイトにも着て行った。

 

 

しかし、流石、ちょっとお洒落用に買ったコートということだろうか。

風を透過して寒いし、守って欲しいお腹が守れていない。

 

ブラックジャック然り攻撃用に着ないといけないのかもしれない。

 

 

そんな紙装甲でもお洒落効果で浮かれて我慢していた。

 

 

 

バイト終わり、いざ帰ろうとした時だ。

外に出たらバイトの先輩がいて、

 

「よかった。待ってたよ〜!」

 

と言われた。

 

おいおい、いくらおニューでお気に入りなコートを身につけて着たからと行って効力が強すぎないか。

こんなことならもっと早くに買ってくるべきだった。

 

 

 

 

 

しかし、なんだか様子がおかしい。

非常に切羽詰まった顔をしている。

 

 

 

「自転車にカエルのミイラがついてんの、お願い取って〜」

 

 

 

意味がわからなかったが、本当についていた。

前かごの折れて飛び出た金具に串刺しになるように干からびたカエルが刺さっていた。

足がブラーンとしている。

 

 

 

なるほど立派だ。

「はやにえ」というやつだろうか。

 

 

 

 

「気持ち悪くて触れない。早くとって!

 

 

いつのまにか命令になっていた。

 

 

 

しかし、いくらなんでもこのカエルミイラは触れない。

人間とばあちゃん家の犬以外の生きた生き物を拒絶する僕にとってこれは難題だった。

 

しかも万が一にもコートにこのカエルが着いたら最悪である。

一発でクリーニング送りだ。

 

こんな展開は望んでいない。

もっとワイルドで野生的な奴に訪れてくれ。

 

色々言い訳を考えたが、他に頼る人もおらず、ここでやらねば男が廃る。

がしっと素手で行く振りしてティッシュで挟んで掴んだ。

 

 

 

しかし、このカエルなかなか、外れない。

焼き鳥の最期の粒を取ってる気分だ。箸で挟んでガリっとしないと取れないやつだ。

 

 

意を決して、両手で行った。

 

長らく刺さっていたカエルと棒とのお別れである。

 

外して見るとこのカエルかなり面白い。

手をお腹の前に合わせ、足を伸ばし、背中から頭にかけてスッポリと穴が空いている。

食わず嫌いで触っていなかったが、こいつなら割と触れそうだ。ティッシュ越しなら。

 

じっと観察もしたかったが、あまり見てるとキモチ悪がられる。せっかく株を上げたのに、ミイラカエルと同列に扱われるのは嫌だ。

 

カエルに別れを告げてゴミ箱に投げ込んだ。南無阿弥陀

 

 

その後、先輩はこの自転車もう使いたくない…といって急いで押して去っていった。

その元凶を掴んだ僕だ。同じ空気を吸ってもいたくなかったのだろう。

 

でもね、先輩。

あのカエルがあそこまで干からびていたってことは、かなり前から先輩のカゴにカエルが刺さってたって事ですよ。

それこそ半生の頃から…。