徒然なるさざれ石

シャボン玉おじさんを目指す大学生奮闘記

雪の日の考察

雪はいい。

 

この歳になっても少年の心を思い出させてくれる。

 

溶け残りの白い雪をわざと踏むように歩いた。

 

 

 

我らが一号館まで行くと、

 

 

 

 

 

 

「フィーーーーー!!!」

 

 

 

 

大きな奇声を発しているグループがいた。

 

 

 

 

 

雪に頭がやられた1年生だろうか。

 

 

 

 

何の意味もなさない「フィー」と言う言葉で仲間同士叫び合っている。

 

 

 

僕もたまに奇声をあげるが、「フィー」は絶対言わない。

 

 

「フィー」は奇声界の中で点が低い言葉として扱われている。

あまりにもストレートな奇声で、チャラチャラ感もあるので審査員受けが悪いのだ。

 

次、奇声をあげんとする人は参考にするように。

 

 

 

さて、彼らの観察を続けよう。

 

時々、「フゥゥーーーー!」も混ざるがその2つが彼らの基本言語なようだ。

 

そんな中、群れの後ろに1人だけ、喋らずくっ付いている人がいた。

心なしか表情が薄い。

 

 

何か察するものがある。

 

おそらく、

1年当初にイケイケグループに属してしまったが、後から自分には合ってないと気づくも時すでにお寿司。

 

もう、他のグループには入れなく、ズルズルと属しているのだろう。

 

そも、他のグループに混ざれるコミュ力があったなら、このイケイケグループにも混ざれているはずだ。

 

 

彼は同族だ。

群れとひとまとまりに呼んでしまって申し訳ない。

 

心の中で合掌し、彼の冥福を祈りながら、群れと一緒に一号館に入った。

 

 

 

彼のカバンを見ると、ドナルドのぬいぐるみとダッフィーのストラップが付いていた。

 

 

しまった、読み間違えていたか。

 

ミッキーなど王道でない辺りを見るに、この人はディズニーオタクで、一緒にディズニー行くからってことで、この群れと過ごしているパターンだ!

 

いずれにしても仲間だ。

よかった。いい子だ、この子。

 

 

 

 

 

だが、この推理の穴に気がついた。

 

この手のディズニーオタクはパレードやショーを楽しむ傾向にあるのだが、この群れだとジェットコースターを周回プレイとかになってしまうのだ。

見たかったエレクトリカルパレードを横目にビッグサンダーマウンテンに走る羽目になる。

これは、オタクにとって許しがたいはずだ。

 

 

 

そう思うと別の関係性がある気がして観察を続けてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

新たにケータイにペアのストラップが見えた。

 

 

 

その瞬間僕の脳裏に100アンペアの電流が走り1つの結論が導き出された。

 

 

 

 

ドナルドにはデイジー

ダッフィーにはシェリーメイ

今覚えばこれらには対となるものがあった。

友達との空気さも心の余裕と他の用事であまり友達と遊んでいなかったと考えれば納得できる。

 

 

 

 

 

こいつは彼女持ちだ。

 

 

 

 

 

 

なんだ、こいつは。

仲間なんかじゃない。

許せられない。

あんまりだ。

優雅に朝から雪を踏んで遊んでいた僕の注意を奪って、そんなことを教えるなんて。

 

 

「ファァァアァァアァァアァァ」

 

僕は群れを追い抜かし、自分の教室に駆け込んだ。